2006年7月 電気屋のささやかな?喜び セカンドオピニオン 故障は点検診断がキモ! | ||
新製品のナビ付けに追われつつも季節がらエアコン修理・点検依頼もグッと増える7月某日。 この日ご来社のお客様のもともとの御依頼はコンプレッサー交換のお見積依頼。 何でもエアコン不調(トヨタ車:デンソー製エアコン)でディーラーさんに持っていったところ コンプレッサー交換で10万前後と診断されたとの事で少しでも安くならないかと当社にご相談頂いた。 お客様のご希望はコンプレッサー交換の場合の見積もりをメールで欲しいとの事だったのだが 当社ではエアコン等・修理の場合はメールのみでのお見積はお断りしている。 なぜならお客様がご自身や他店で「エアコン不調でコンプレッサー交換が必要」と判断したとしても 実際に拝見するとコンプレッサー以外が原因であることが多々あるからだ。 電装屋の基本は故障原因の切り分けである以上、実際に拝見しない限りは見積もりは出来ないのだ。 で、お客様にもその旨ご説明し実際にご来社頂いた。 いざお車入庫。症状はエアコンは良く冷えるがしばらく走行すると エアコンランプが点滅し全く冷えなくなる、その後復活する時としない時があるとの事。 これは比較的簡単な診断だ。なぜなら一般的にトヨタ車でエアコンランプが点灯するのは コンプレッサーのロック信号を検知した場合なのだ。 *コンプレッサーにかかっているベルトが1本物の場合、コンプレッサーが焼きついてロックしてしまうと ベルトが切れてしまい、走行不可になってしまうのでそれを防ぐ為、コンプレッサー自体に 回転センサーが付いており、コンプレッサーとエンジンの回転数を照らし合わせて監視しています。 エアコンスイッチがオンになっている状況でコンプレッサーの回転数がエンジン回転数より少なくなると コンプレッサーロックと判断しエアコンコントロールシステムがコンプレッサー電源を切ると同時に エアコンインジケーターランプを点滅させ運転者に異常を知らせるシステムです。 となると、「なるほど、エアコンランプ点滅はコンプレッサーロックなんだな」と考えると思うが そんな単純な話なら電装屋は存続していない。もしかしたらディーラーさんでは この段階でコンプレッサー異常と判定してしまったのかもしれないが このお客様の場合、効くときは効いているとの事。 コンプレッサーが本当にロックしていればエアコンはどうやっても効かないし その兆候があるとしたら異音も出る。走行後しばらくすると・・から考えると エアコンサイクル自体に冷却不良等があり圧力が上がり過ぎて・・・と言う場合もあるが これだと点滅前にも効きが悪くなるはず・・・・・・・・ となると考えられるのはコンプレッサー自体のロックよりも ベルトの張りが弱く加速時等にベルトが滑ってロック判定が出ているかコンプレッサーの電源回路自体に 電気的問題がある等だ。まともな電装屋なら問診だけでもこの程度までは絞り込める。 実際にお車拝見、エンジンオフにてコンプレッサーを手で回し、状態を確認してみるが やはりロックはしてない。ベルトの張りも問題ないようだ。 とりあえずエアコン点検の基本である圧力確認の為ゲージを付けエアコンオン。 サイクルの圧力・冷えはきわめて良好。コンプレッサー含むエアコンサイクルに異常があるとは思えない。 やはり電源回路が怪しい。走行後しばらくすると・・・と言うことなのでしばらく様子を見る。 その間、コンプレッサーのオン・オフを繰り返したり回転数を上げたり下げたりし 制御機能やリレー・マグネットクラッチ等に問題はないか実際の作動と目視と音を頼りに点検。 しかし、いくら待っても症状が出ない。次はテスターを使って電源回路をあたって行くわけだが 電源系統の不良の場合、症状が出ていないとテスターを使っても判定に出来なかったり 必要以上に時間がかかる事が多い。ゆえに、テスターの前に症状を再現・確認するのが最優先となる。 で、その為に行うのはとても古典的な方法。 漫画やドラマ?で良くある(実際にもあるかな?)話で 「お母さ~~ん。TV又映らないよォ~~~壊れてるぅ~~」「そんなの叩けば治るわよ!!」 と言うアレである。これ、近代的な電気製品に対し冗談のような話だがある意味理にかなっている。 電気製品の不良の場合、接点等の接触不良が原因であることが多いので 振動を与えることによって接点の接触面がずれて当たりが良くなり結果として治ることがある。 ゆえにその逆で症状が出ない場合、振動を与えることによって接触不良面が悪い状態になり 症状再現する場合があるのだ。 車の場合、リレーやモーターなら軽く叩く・配線なら揺らしてみるという方法は 電装屋では症状再現のための基本作業でもあったりする・・・・・ そこでまずはコンプレッサーに入る配線から揺らしてみる・・・・と・・1発で症状再現!! ん??これは良くあるカプラーがキチンと入ってないパターンか??目視では問題なさそうだったが・・ 念のためカプラーを押し込んでみるがやはりキチンと入っている。 が、明らかにカプラーの根元を揺らすと症状が出る。間違いない。カプラー近辺で接触不良だ。 エンジンを止めてカプラーを外しよ~~く見るとカプラーの防水ゴムで隠れた部分で配線が 切れかかっている。(大部分が切れ、1部がかろうじて繋がっている状態) これでは走行中の振動&エンジンルーム内温度上昇で配線の抵抗値が上がり導通しなくなる。 この部分を修正し、その後再テストで症状が出ないことを確認。 結果、ディーラーさんでの見積もり10万円前後は 点検料+配線修正で1万円もかからず完了したのだった。 この修理は電装屋としてはごく基本的な点検・診断であり良くある事例でもある。 別段、”さすが専門職”といわれるほどの作業ではないのだが それだけに、安く上がり喜んでお帰りになるお客様を見送りながら ”してやったり。これが電装屋の基本的な実力さ”とささやかなプライドを満たされる瞬間なのでした。 さて、今回のオチは電装屋に頼むとエアコン修理は安く上がる・・・では無く・・・ 他店で見積もりを取ったが再診断をして欲しいと言うご要望は 当社HPをご覧になったお客様から近年特に多くなった。 本音を言えば、最近は整備業界全体の落ち込みの問題から ディーラーさん・整備工場さんでもエアコン修理の自社整備は積極的に行い、 価格も結構安くしていることも多いので見積もり内容(不具合箇所判定)が正確ならば 修理金額はそれ程安くならない場合も多々ある。 それどころか車種によってはディーラーさんより高くつく場合もあるし、 分解整備を伴う場合や資料・専用工具類が無い場合等(更に当社ではキャパシティの問題)で 電装屋では修理できない場合もある上、修理不可でも点検料は発生するので いちがいに電装屋がすべての面でOKと言う訳でもない。 逆に他店の見積もり内容自体が間違っている場合は今回の話の様に極端に金額が安くなることもある。 (当然極端に高くなることも・・・・・) それを考えると医療で言うところのセカンドオピニオン。これは自動車整備でもアリなのだろう。 残念ことだが医者も車の修理屋も相手が個々により様々・独自の個性を持つ人間・車であり その悪い部分・原因も多種多様である以上、全ての事例において確実で完癖な診断を 一発で判定・治療することはできないのだ。 その点から考えると総合的な判断が可能なディーラーさんで点検、 更に不具合箇所(エアコン)の専門職である電装屋で再点検、はより確実で安心と言えるのかも知れない。 |
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