2008年8月 当たり前の事なんだけど・・・エアコン修理の基本? たかがネジ締めるだけでも・・   
すっかり夏本番でエアコン修理も大忙し。
その昔はエアコンは後付け、エアコンを作っていたのが日本電装(現デンソー)等
って事もあり
エアコン修理は電装屋の専門分野になりました。
現在では整備屋さんやディーラーさんでも不景気?ってこともあり
エアコン修理を下請の電装屋さんに出さずに自社で修理するところも多いようです。
もちろん、
きちんとした知識と技術と設備・ガス回収の資格を持っている工場なら
自社修理もまったく問題はありません
が、やはり専門の電装屋とは経験が違う?のか
教育が違う
のか(実際、2級整備士の2種養成学校ではエアコンの実習作業はやってません)のか
ごく基本的な作業でもキチンと行われていない事は多々ある様で・・・

そのお客様は昨年秋にナビ付けで当社にご来社。
その時の日程調整の際、
他の工場でエアコン修理をしていてその作業日程がずれたので・・
なんてやり取りがありました。
で、今年の春先にエアコンの効きがイマイチなので見て欲しいとのご依頼。
ん・・・確か去年の秋に他の工場でエアコン部品の殆どを換えていた筈・・・
だったらクレームでは??
と思ったのですがお客様のご要望もあり当社で見させて頂く事に。
正直な事を言うと他の工場で一通りの作業をした後の不具合車の点検は
何をどう作業してるのか(キチンと作業してあるとは限らないので・・・)わからない事もあり
気が重いのですが・・・

で、点検では致命的なガス漏れ等は無く、
お客様のご要望もあり、3月と先日の2回にわたりガス補充と
蛍光剤(後日ガス漏れした場合に容易に判定できる)注入で様子見。
が、2度目のガス補充の
翌日に”エアコンが全く入らなくなった”とメールが・・・

すかさず2度目の補充作業をした工場長に状況を聞くと・・
工「コンプレッサー付け根に漏れ反応がありました。
 
半年前に他の工場で取り替えている部分なので
 クレームでその工場で直してもらった方が良いと言った
んですけど
 とりあえずガス補充して欲しいとの事だったんで。。。」

僕「だって1日で抜けたらしいよ。そんなに酷い漏れなのに補充したの?」
工「まさか、そんな酷い漏れなら補充しませんよ。
  僕が見たときは半年くらいは持ちそうな感じでしたけど・・・」

僕「って事はイキナリどっかがパンクしたか??いや、私が見たときは
  殆どのエアコンパーツ換えてあったしエバポレーターくらいしか怪しい箇所も無かったけど・・」
工「僕が見たときもコンプレッサー付け根以外は問題無しでエバも大丈夫でしたよ」
って事は・・・2人の頭の中は同じ結論。
他の工場でコンプレッサー交換作業をした時にコンプレッサー付け根の
接合がきちんとされていずにOリングが切れたか接続面がイカレたか・・・
のどちらかだろう。
突然一気に漏れるってことはOリングが切れた可能性が高いが・・・
前者ならOリング交換のみで終るが後者なら最悪換えたばかりのコンプレッサーと
ホースの両方を換えなければならない。こりゃ完璧にクレーム処理の方がよいだろう。

しかし、よくよくお客様の話を聞くと3月に僕が点検(コンプレッサー部の漏れは確認できず)した後、
以前の工場とは別の工場でエンジンマウントの交換をしているとの事。
エンジンマウント交換時は車種にもよるがエンジンを少し持ち上げて交換する。
その際にエンジンから出ているホース類(コンプレッサーのホースもこれにあたる)は
問題なければそのまま(クランプ類は外す)、無理な力がかかるようなら一旦外して付け直す。
と言うことは今回問題のコンプレッサー付け根の結合も
エンジンマウント交換時に
ミスった
のかコンプレッサー交換時にミスったのかは不明になってしまう。
単純に見ればエンジンマウント交換後に付け根の漏れが発見されたのだから
マウント交換時と考えるかもしれないが元々下手なつけ方をしていたところに
マウント交換時にかかった力でトドメをさされたって場合もあるし・・・

ともかく、お客様がクレーム云々より当社での作業を御希望頂いたので
まずは確認・・・でご来社頂き、すかさず工場長と2人で現状を見る。
ガスはやはりすっからかん、コンプレッサー付け根にはガス漏れ痕が・・・

そこでコンプレッサーに入る2本のホースのうち、
まず手前の低圧側を外そうと工具を入れると・・・
絶句!!なんじゃこりゃ!??ムッチャ固い!!
半年前にコンプレッサーを交換しているとは思えない固さ。
明らかに規定トルクを遥かに超えた力で締め付けてある!!


そう、エアコンパーツの結合部は結構太いボルトやナット類で構成されているが
実際にガスをとめるのはわずか数ミリのOリング。
ゆえに、ギュウギュウに締め付ける必要は全く無く逆に締め付けすぎれば
Oリングが切れたり潰れたり、最悪結合部が破損する。
大事なのはOリングをキッチリ所定位置にあわせ、
接合部がずれないように手でしっかり押さえ、ボルトやナットは最後の手前まで手で締める。
その時に途中で固くなったり変な手応えがあれば、それは結合部がずれていたり
Oリングがキチンとセットされていないと言う事だから再度確認してやり直す。
工具で締めこむのは最後の半回転くらいだ。
これが
Oリング結合部の正しいしめ方で電装屋なら誰でも知ってる基本中の基本だが
整備屋さんの仕事を見ていると最初から工具でグイグイ締め込んでいたりする。
これが今回のようなトラブルを生むのだ。

ついでに言っとくと、エアコン修理でOリングを扱う時は軍手は外すのも基本。
軍手の糸くずがOリングについてしまうとそこからガス漏れをおこすから
Oリングを扱う時は綺麗な手で・・・・となるのである。

話し戻って・・・次に高圧ホースを外す。こちらは低圧ホースより奥にあり
工具&手が入りにくい。
無理な姿勢で締め込んだ可能性も高そうだ。
で・・・外してみると・・・・・・
やっぱり・・・・・見事にOリングが切れてました。。。。

これではじゃじゃ漏れですね。。。。

Oリングの場合は、本当にこんな細いパッキンで高圧力のエアコンガスをとめています。
多少曲がってしめ込んであってもその弾力で少しの漏れにとどめていたとしても
振動で削られていきプチッと切れた瞬間に一気にガス漏れをおこします

そしてこのような症状(Oリング切れ)は経年劣化で起こる物ではなく
その殆どが作業ミスです。

僕自身は昔ハイヤーのリアエアコン(LPG改造の為、ハイヤーの工場でホースを作成して改造)で
この例を沢山見ていますが新車から手付かずの車では見たことはありません。
作業ミスと言ってもきちんとした作業手順&感触を知っている電装屋なら
締め込む段階で”あれ?これ・・かみ込んでるな・・”と気づくのですが
それを知らない人が作業するとこんなことが起こるんですね。

と言うわけで今回のオチは
エアコンパーツの交換・接合はOリングを入れて締め込むだけ、
とっても簡単な作業ですけどそれでも基本が解ってないと
その簡単な作業が要因で大きなガス漏れを起こします。
車の各パーツを組み付けたりするのが仕事の整備屋さんでもこのような事があります。
やはりエアコン修理は専門の電装屋が安心
・・・・ってただの宣伝か・・・(^^ゞ


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