2009年1月 困っちゃったシリーズ その1 エンジン不動・・・ トランポが欲しい・・・   
今回はもうずいぶん前の夏の暑い日の話。
なぜ今頃そんな昔の話を書くかと言うと、
先日、電装系修理でご来社なされたお客様、
某ディーラーさんのメカニックさんだそうで・・・その方が
「HP、何時もみてますよ。スゴイですね。何でもできて・・・」
いや・・・何でもは出来ませんけど・・・
「うちなんか”お手上げ!”って仕事ばっかでやになりますよ・・・」
お手上げって・・・その後どうするんだ??
「大塚さんのところでは修理請けちゃってから治せなくて困ることなんか無いんですか?」
「あ〜
最初の問診や点検・ご相談時に当社の範囲外のことや資料やテスターの問題で
 
作業できない場合はその旨説明してお断りしてますんで
 
仕事請けちゃってから”お手上げ!”ってなったことは無いですねぇ〜
なんて会話があったのだが、
実は過去に一度だけ、
お車をお預かりしておきながら当社で対処できずにディーラーさんに回してしまった事があった。

その事を思い出し”もう時効かな・・・”って感じで書かせて頂きます。

その日は
夏の暑い日工場長が有休を取っていた為、僕は内勤。
そこにかかってきた電話。
内容は
エアコンが急に効かなくなった
仕事でフルに使っているのでこの暑さでは耐え切れず困っている、との事。
この日はエアコン修理のシーズン真っ最中で工場はお客様のお預かり車両が目一杯詰まっており
新規でお預かりでの修理はおろか、点検スペースもない状態
だったのだが
お客様がすぐ近くに来ていると言う事と
話の内容からエアコンサイクル自体の不良(ガス漏れや詰まり・コンプレッサー圧縮不良)では無く
ヒューズ切れやスイッチ不良等、電気系統の不具合の可能性が高いと判断

それならちょっと見れば原因は判るかな?と思い
お預かりは出来ませんけど路上でちょっと原因見るくらいなら出来ますよ。
 原因によっては応急処置が出来るかもしれません
」とご来社頂いた。

お車はVWゴルフ。(何年式だったかは記憶が定かではない・・・)
さっきまでガンガンに冷えていたとの事なのでコンプレッサーが回れば冷えるだろう。
とりあえずコンプレッサー部を確認するとやはり電源が来ていない。
まぁ、まずはヒューズだなと思いつつ、
エンジンルーム内のプレッシャースイッチ等も確認してから室内へ。

で、ヒューズをあたっていくと予想に反しエアコンシステム関係のヒューズは切れていなかった。
が、エンジンコンピューター関連のヒューズがひとつ切れている。

・・・・・・・・・・・・いやな予感・・・・


そう、
エンジンコンピューター関連のトラブルの場合、資料や配線図がないと正確な診断は出来ない
(と言うか資料なしでエンジンコンピューターの点検をするとなると
 膨大な時間と手間がかかるのでディーラーさんに行ってもらったほうが安くて早いのです)
そして輸入車の場合、資料が入手出来ない場合もあり、
その時点では
ワーゲンのエンジンECUの資料は手元に無かった

とりあえずヒューズを替えてみると無事エアコンは正常作動になった
しばらくしてもヒューズが切れることは無い。
予断はゆるさないがひとまず安心。
とりあえずお客様のご希望通り、今日1日くらいは涼しい状態でお車を使えるだろう。
たまたまヒューズが切れたのなら良いのだが・・

通常、
当社の仕事はここでヒューズが切れた原因を探すこと
が、この日は本格的な点検はできないって事はお断り済みだったのと
お客様も急いでいるって事でそのままお帰り頂いた。

その際、「
次にヒューズが切れたらエンジンコンピューター関連が怪しいので
 ディーラーさんで診て貰って下さい。その方が早いし安いと思いますので・・
・」
とご案内して・・・・

そして30分後、同じお客様が戻ってきた・・・・・(汗。
やっぱりしばらく走ったら同じ状況になってしまったとの事。
近くのディーラーは知らないのと、
とりあえず今日はそのまま車を使いたいので
ヒューズだけ替えて欲しい
とのご要望。

う〜〜ん・・・・・この短期時間で切れたのなら明らかに悪い原因がある・・・
それをそのまま出すのも気が引けたがとりあえず替えてみると・・・・

ありゃりゃ・・・・完全に逝ったらしく今度はすぐに切れてしまう。
これは路上でちょいちょいと治せる範囲ではない。

念のためもう一度エアコンシステム関係の各配線やセンサー・スイッチ類を確認し
異常が無いことを確かめた後、お客様には
「申し訳ないのですが簡単には治せないので今日はこのままお乗り下さい。
 後はディーラーさんに・・」とご案内しキーをまわすと・・・・


キュルキュル・・・・
しーーーーーーーん
キュルキュル・・・・・
しーーーーーーーーん  (ーー;)

や・・・やばい・・・・・エンジンかからん!!

かぶったか??・・・まさか・・・そんな昔の車じゃあるまいし・・・・
内心、エンジンコンピューターが逝っちまったのだろうと予想はしつつも・・
ここまでは自走していた
のだ。
運悪く?僕が診ている間に、点検とは関係なく症状が進行していたとしても
お客様から見れば”何か点検時にミスったのではないか?”なんて
疑念をもたれる場合もあるだろうし、何より動かない車をそのままに
まさか「今日はこのままお帰り下さい」とか「後はディーラーさんとご相談下さい」なんて
とてもじゃないが言える訳も無い・・・

無駄とは思いつつ始動関係をチェックすると
プラグに火は飛んでいる
レギュレーターに燃料も来ている。点火タイミングが狂っているのか??
どの道
すぐにはどうにも出来そうにも無い

これが普通の状況(修理予約でご来社されたお客様)だったら何も焦ることは無い。
じっくり点検し対応すればよいのだ。
しかし、このお客様は飛び込みで
お車もすぐ必要としている&
預かるにしろこの日は車庫は目一杯・・・・

そして何より・・・
車庫が空けたとしてもこの日は僕以外は事務の女の子一人しかおらず
エンジン不動の車を中に入れることすら出来ない状況だったのだ。。。。。。(超大汗

ゆえに、必要以上に焦っていたのであった・・・

とりあえず、仕事で急いでいると言うお客様には
代車が空いていたので仕事には代車で行ってもらうことにし、その問題は解決。
が、お客様が代車でお帰りになった後、
会社の前の路上でエンジン不動となった車と一杯の車庫を眺めて途方にくれる・・・
車庫は代車の駐車場(会社からは離れているので基本的にお客様の車は停めない)に
どれか1台持っていけば何とかなる。
が、そこからこの車を僕一人、もしくは事務の女の子と2人でスロープになっている歩道部を超えて
工場内に入れるのは無理・・・・・・

たまたま工場長が有休の日に限ってこんな事になるなんて・・・・
どうしよう???と焦り悩む・・・・男手がもう1人あればすむ話なので
出入りの業者でも来れば・・・だが時間はもう夕方、その予定は無い。。。。
最悪ヤマト急便の集荷のお兄ちゃんが来たら手伝ってもらうか??など
焦りから意味不明な試行錯誤を繰り返し・・・・・

”いや、エンジンかかれば問題は無いんだからエンジンかけちゃえばいいじゃん!
 もう一度チェックだ!!”
と、頭の中でエンジンコンピューター替えないとダメだろうと予想しつつも
かすかな期待と現実逃避で再チェックを始めると・・・・・

うわぁ〜〜〜〜〜
さっきまではとりあえずプラグに火は飛んでいたのに
今度は火も飛ばなくなってるよ・・・・・・
うわっ・・・燃料もキテナイ・・・・・こりゃあ・・・完ぺきに逝ったわ・・・・・・OTL

その時点で遅まきながら最初にお客様が来たきの問診を思い出す。
「急に冷えなくなったとの事ですけどその前に何か気になることはありませんでしたか?」
「特に無いんですけど・・・
昨日の夜大雨の中、ずいぶん走ったのが
 気になると言えば気になりますけど・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ・・・思い出した・・・・


この車のエンジンコンピューターはエンジンルーム内(ワイパーのところ)についており
水が入ってダメなる事があるって前にどっかで聞いた事あったな・・・・

たまたま僕が点検している間にその裏で悪魔のウイルスように
その症状が進行して行ってたって事か・・・・・・(>_<)


しかし、気付いた時にはすでに夏の暑い1日も終わりが近づいていた。
この路上放置された車をどうするか??時間が遅くなれば対応策はどんどん無くなっていく。
今からエンジンコンピューターを注文して、更にうまく在庫があったとしても
配達してもらうには時間が遅すぎる。在庫があったなら僕自身が倉庫まで取に行けば・・・
が、お客様の車を路上放置したままでは不可能だ
おまけにエンジンコンピューター不良と言う判断もきちんと診断したわけではなく
あくまで僕の経験と現状からの推測で100%ではない。
その状態で多分10万円以上するであろう高額パーツを替えることは出来ない・・・


仕方なく、無理とは思いつつ、近くの同業者に牽引&車を預かってもらえないか電話してみる。
が、エアコン修理の稼ぎ時のこの時期に他人の会社のトラブルに
そんな手を貸してくれる奇特な方等おらず
あっさり却下・・・・

そうだ!奇特な方といえば、半ば業務提携しているまこでんさんなら
僕が無理を言えば受け入れてくれるかもしれない。
しかもまこでんさんはワーゲンの下請けもやっているから
そのまま部品手配や資料を回してもらう等も出来るかもしれない・・・・
が・・・・同じ都内といっても距離がある・・・
お客様のお車を牽引で持って行くには遠すぎる。
トランスポーターさえあれば・・・が、今からトランポを手配したとしたら
まこでんさんに車を持っていく頃にはとっくにみんな晩酌でも始めてる時間になってしまう・・
かすかな願いを込めてまこでんさんに
「トランポなんて持ってないよね?」と電話してみるも
やはり持っていない。
そう、もともと下請けである我々電装屋ではトランポはディーラーさんや整備工場が
用意してくるものなので自社でトランポを持っている必要は無いのだ・・・

途方にくれる僕にまこでんさんは電話で
「ワーゲンだったら杉並(ディーラーさん)が近いんじゃない?
 あそこならトランポ持ってるかすぐ手配してくれると思うけど・・・」

うん・・・・・・確かに近いんだけどね・・・・
僕の中にかすかな(実は大きな)引っ掛かりが・・・

もともとお客様には「ディーラーさんに・・・」とは言っていたが
成り行き上とは言え、お車をお預かりしてしまった以上、
そのままディーラーさんに渡すのは投げ出すようで非常に抵抗があるのだ・・・

と言うかディーラーさんに持って行けば当然そこで点検・おそらくコンピューター交換、
それでエアコンの不具合も治るであろうから、お客様にはそのままお渡し・・・
となると当社で預かった意味も無くなってしまう・・・・
何より、どんな事情にしろ一旦お預かりしたお車を
修理はもとより原因特定もしないまま他の修理業者に渡すのは
僕のささやかなプライド&ポリシーが許しがたい・・・・・



しかし、現実的にはその選択しか残っていなかった。
意を決し、当社と同じ環七沿い・車なら5分程度の距離にある
ディーラーさんの整備工場に電話し事情を説明すると
「あ〜ちょうどトランポの業者が近くにいるのですぐに取に行きますよ」と・・・・

トランポに載せらて運ばれていく車を見送る僕の心のなかにはドナドナド〜ナド〜ナ♪と
メロディーが響き続けていたのでありました・・・・・



と、これが多分、僕が覚えている範囲(僕が担当した作業内)で
唯一
「お手上げ」・・・と言うか預かっておきながら他業者に投げてしまった仕事
過去に何度かこの話を書こうと思っていたのだが
なんとなく?プライド??が許さず書かずにいたので、
この記事がアップされれば少しホッとするかも知れません。


ちなみにその後ですが、ディーラーさんには預ける時にお客様の連絡先も教え
後はお客様と直接やってもらってかまわないが原因だけ教えてくれと依頼し、
お客様には事情をご説明し、勝手にディーラーさんにまわしてしまった
(連絡のすれ違いと時間の関係で事後報告になってしまった)事を深くお詫びした。

翌日にはディーラーさんから電話があり
やはりエンジンコンピューターに水が入って逝っていたそうだ。
ちなみにこのディーラーさん、輸入車ディーラーにしては?なかなか気の利くディーラーさんで
どうしますか?こちらで交換してお客様に渡してもいいですけど
 それじゃ御社の利益にはまったくならないですよね?
 代車も出してるようですのでこのまま御社に戻してECUの交換するか
 こちらで交換してから御社に収めるようにしましょうか?

と言ってくれたのだが、それではお客様の負担が大きくなるので
そのままディーラーさんから渡してもらうようにした。
もちろん、エンジンコンピューター交換によりエアコンも正常に戻っている。
当社としては最初の点検料(路上&15分程度でヒューズ交換しただけだったので雀の涙ほど・・・)を
頂いてはいたがディーラーさんまでのトランスポーター代金は
お客様へのお詫びとして当社で負担したので、結果としては丸損だったが
商売の損得よりもプライドとしての悔しさの方がはるかに大きかったのを未だに覚えています。

で、今回の
オチは、トランポが欲しい・・・ではなく
広いスペースとスタッフが欲しい・・・ってところでしょうか。

本来なら
キャパシティに見合った仕事の選択を・・・となるのでしょうが
困っている&当社を頼ってきて下さったお客様を簡単に見放す様な事は
今後も多分しないでしょうから・・・・・・
僕はやっぱり商売人としては向いていないのかもしれません(^^ゞ


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