2009年11月2 カーナビ取付事例その十二 百聞は一見にしかず・・・・ 〜プジョー807編〜
お断り:
今回の記事は大塚専務の下書きを基に、事実はそのままですが文章は闇烏が適当に脚色しております。
ゆえに、登場人物及び関係者に対して失礼な記載もあるかもしれませんが笑って許してくださいm(__)m


2009年10月半ばにその電話は鳴った。
”以前プジョー307CCでお世話になったSですが・・・
 車買い換えたんでナビ取付けられるかどうか・・・
 大塚さんで付けられるなら頼みたいんですけど・・・・”

忘れるはずも無い。
一般のお客様&307CCのお客様は多数いらっしゃるが、
このお客様は後に307CCが大量に当社に入庫する呼び水?となった方。
そう、この修理日記でも2006年4月2の”警告ランプ点灯!?new307CC編”と
2007年3月の”車業界の裏話?解体屋さん”の2回にわたって取り上げている。

そして記事にはしていないが、その後、新たな307CCにもナビ移設しているのだ。
何度もご来社下さるお客様は多いが、このS様はその数は少なくとも印象はやたら強い方なのだ。
(ツーか闇烏が個人的にこの方のブログが好きってのもあるけど・・・・)

で、新しい車はプジョー807とのこと。
ぇ??ぷじょー807??どんな車だ!?見たことも聞いたことも無い・・・・
そりゃそうだ・・・・日本のディーラーでは販売しておらず
現在国内を走っているのは並行輸入のみで10台も無いらしい・・・・・


早速ネットで807をググって見るが・・・・恐ろしいほど情報が出てこない!!
兄弟車のシトロエンC8や普段は見ない海外サイトまで探すもたいした情報は出てこない・・・

このネット全盛の時代、普通はちょっとググれば車の概要や、ナビの取付例、
たいていの車は具体的なナビの取付け方まで検索できる時代、
過去にもアルファRZやオペルスピードスター等、希少な車の
ナビ取付の際も充分な情報がググれたのに、
この807は内装の写真を探すのにも一手間かかるほど・・・・・
恐るべし・・・・プジョー807・・・・・(ーー;)


とりあえずS様のお話とご希望は
純正オーディオ部は1DINなのでそこにモニターを設置、
純正オーディオはインフォメーションパネルの操作・設定に必要なので移設って事で・・・・
結果、楽ナビオンダッシュモデルを専用1DIN金具を利用し、純正オーディオ部にって線で
取付可否と見積もりを出すことに。
だが、資料がまったく出てこないので見積もりにあたって懸念されることは・・

1.ナビに必要な各信号線が取れるか?
→特に車速信号が懸念されるが、これはCAN-BUSアダプターを使ってしまえば
 確実に取れるのでとりあえず、アダプターを入れてお見積
2.ナビの音楽ソース音を純正オーディオに入れられるか?
→純正オーディオは日本向けの307CC後期型の物に換えてあるとの事なので
 純正AUXが使えればベストだが、とりあえずFMモジュレーターなら確実なので
 モジュレーターでお見積。
3.ガラスは熱反射か否か?
→これは多分最近の年式のプジョーなら問題ないと思うので否熱反射でお見積。
 実際熱反射だったとしても作業当日に対応できるので問題なし


と、まぁ、取付自体は何とかなりそうなのだが、
今回のご相談で最大のネック&障害は・・・・・
お客様のご希望で「車両の購入もとには絶対に内緒でナビをつける」と言うこと。
なんでも購入時に購入もとから
「絶対にその辺のお店でナビをつけたりしないように!ナビを付けたい時は必ずうちに相談して下さい。
 その辺のお店じゃ無理だし、下手な取付で何かあっても一切保証できませんから」

と、強く言われたそうで・・・・・

となると、作業中の万が一のトラブルの際の対応は勿論、
上記懸念の情報を事前に購入もとに聞くことが出来ないってこと。
まぁ普通なら当社からディーラー等に問い合わせることなど殆ど無いのだが
なにせ希少&情報が入手できないお車。一切問い合わせが出来ないってのはチトつらい・・・
と言うかプレッシャーも大きい。。。。

こりゃなんとかどこからか情報取れないか??と考えると・・・・
そうだ!こんな時のためにプジョー情報網を活用するか!!
そう、このS様の307CCナビ取付の記事を掲載依頼、
プジョーへの取付ご依頼や問い合わせは恐ろしく増え、
その中にはプジョーディーラーや営業マンからの問い合わせや依頼もありその時に作った情報網だ!
と、名刺入れのライオンマークがついた名刺に端から電話する。

が・・・・これはすぐに断念。そりゃあそうだ。
ちょっと考えれば誰でもわかることだが、ここにある名刺の人はみんな
プジョー関係者ながらも市販ナビの取付がわからなくて当社に聞いてきた人たち・・・
イコール、こちらから市販ナビの取付について聞いても役に立つ情報が出てくる筈無いのだ・・・・
配線図は無理でもせめて807の仕様の資料だけでも・・・と思ったのだが
プジョージャパンでは807は販売していない・・・・・
中には807自体を知らない人もいたくらい・・・・・・う〜〜ん・・・・

仕方ない・・・・あまり気乗りはしないが最後の手段、秘密諜報部員を使うか・・・・
(秘密諜報部員なので詳細は明かせませんが提携電装店のT君です・・ってバレバレか?)
数日後、潜入操作を敢行し、危ない橋を渡り終えたT君より電話が入る。
「専務、指令の書類、入手しました。けど・・・暗号のようで解読不明です!」
(実際には「意味不明で全く役にたたないと思います・・・」と言っていたが・・・・)
まぁ、意味不明な書類しか出ないだろう事は予想していたのでとりあえず極秘便にて送ってもらう。

書類は数枚あり、中の1枚は日本語の記載だが、
いかにもフランス語を直訳したって感じで意味不明。
他は記号や数字と図が並び、配線図ではなく回路図・・・と言うか概念図のような物。
まぁ、輸入車の場合、ちゃんとした配線図でもこんな感じな物が多いのだが、それよりも遥かに意味不明。
こりゃ確かに暗号文にしか見えないわな・・・・・

が!電装品の暗号文?解読能力に関しては若干T君を上回る僕ちゃん
(一応先生だし・・・)
暗号文の中に「6739」の文字列を発見!!
そう、プジョー・シトロエンの車速信号線は配線番号6739
そして、それを基に解読していくと、この車速(であろう)線は、
集中制御ユニットからメインハーネスを通り、11番のコネクターに接続されているであろうことを確認。
配線色やピン位置などは全くわからない
これならCAN−BUSアダプターを使わなくても理論上は信号が取り出せる事は事実!
見積もりからアダプター代2万円強が減らせるのだ!!

ここまで解かっただけでも大収穫なのだが、欲が出てもう少し・・・って事で
再び秘密情報部員に集中制御ユニットと11番コネクターの取付位置の情報召集を依頼。
情報収集能力に関しては007をも凌ぐT君、
再び危ない橋を渡り?、ユニットはエンジンルーム左ヘッドライトの後ろ、
コネクターは室内右Aピラーの下あたりとの情報をゲット。
これだけ解れば後は実車で調べれば何とかなるだろう。T君に感謝m(__)m

*と言うか・・・・CAN−BUSアダプター使っちゃえば簡単&確実で手間も減るし
 部品売り上げの利益も上がるのでその方が良いんですけど、
 S様は307CCの時にもCAN−BUSで悩みつつも当社で解決したと言う事を
 当社への信頼の基になさっていると思うし、それより何より
いつもの悪い癖
 ”
アダプターなど使わなくても取り付けてみせる!”って電気屋の意地?が炸裂しているのです・・・・・

さて、実際に入庫になったのはご相談から1ヵ月後の11月後半。
(購入もとにバレ無い様、点検等が一通り終わったあとってことで・・・・)
入庫予定日の未明に九州は熊本、阿蘇を出発すると言う、恐ろしいスケジュールでご来社頂きました(^^ゞ
(ほんと、このS様には車の趣味といいバイタリティと言い驚かされます・・・・)

S様のご都合もあり、一週間お預かりだったので急ぐ必要は無かったのですが
これも僕の性分で一刻も早く確認したい・・・と入庫後すぐに懸念事項の確認。

まずはガラスのチェック。テスト機で試したところGPS受信もTV受信も問題なし、
予想通り熱反射ガラスでは無い。OKだ。
そして、次は・・・・問題の車速。すぐにボンネットを開けて
左ヘッドライトの後ろをみると・・・・

あったあった・・・・このユニットだろう。
大きなコネクターが3つ入っており、
そのうち1本がメインハーネスに入り
右側から室内に入っている。
この中に配線番号6739があるはずだ。
後はそれを探せば・・・・・・と・・・・
ん??・・・・・配線・・・多いな・・・・(汗

・・・・・見える部分も少ないし・・・・・・(大汗
そう、ここで大きな障害にぶち当たり、愕然とする。

さっきから簡単に「配線番号6739」と言っているが、
この配線番号、その名の通り、配線の被覆に直接印刷してある。
配線は細い上、番号以外にも異なる番号や印が書いてあり、それも鮮明ではないので
これを確認するには慣れと”良い目”が必要。

もちろん、今までもこの確認でプジョーやシトロエンの多数のナビを取付けているのだが
実は僕はこの配線番号読み取りが苦手で
自分で取付する場合でも配線番号の確認だけはいつも工場長に頼んでいるのだ。

なんてったって近視&乱視&最近老眼気味だし・・・・・

まぁ、それは翌日にでも工場長に頼めば良いとしても
今回は探すハーネス(配線束)内の配線が多すぎるし、目視できる配線の距離が短すぎて
この中から配線番号を読み取ることは工場長でも多分無理。

こういう場合、配線を抜いてハーネスを覆っているコルゲートチューブやテープを全部はがし、
各配線をある程度の長さ露出させて探せばよいのだが・・・・・・


今回は前記の通り絶対失敗(警告灯をつけてしまう等)は許されない。
内容&作動のわからない制御ユニットの配線を抜いてバラバラにするのはリスクが高すぎる。

CAN−BUSアダプターを使いたくないのは単なる僕の意地だし、
念のためアダプターも用意しているのだからここは無理は禁物。
当然の事ながら電気屋の意地よりもお客様との約束が最優先なので
僕にしては珍しく即決で”ここから車速を探すのは危険”と諦めました。

T君の決死の情報収集が無駄になってしまったことは悔いつつも配線を元に戻している時
ふとその横のABSユニットが目に入る・・・・・
(ABSユニットはどの車でも同じような形状なので一目でわかる)

経験上、車速信号がCAN−BUSにはいってしまっており、取り出せないタイプの輸入車でも
ABSユニットには単線で車速信号が入っていることが殆ど


最悪の場合でも、ABSユニットには各ホイールからの回転信号が入ってきているので
これに整流器をかまして車速信号として使うと言う超裏技もある
そう、ABSユニットは車速信号取り出しの最後の砦なのだ。
そして、その作動原理もわかっているから
コネクターをばらしても大丈夫なのも認識済み。

オマケにこの車ではコネクターの後の配線部分を
露出させることが容易で配線番号の確認も出来そうだ。
こりゃ見てみる価値はあるか??と
早速、配線をむき出しにしてみる。
(やっぱり諦めてナイジャン・・・・・・)

←このくらいの長さ配線を露出させれば
配線番号は読めそうだ・・・・・
配線の数はソコソコあるけど・・・
このうちツイスト線になっているのは全てホイールセンサーからの線なので除外。
となると残りの配線は6本くらい。
うち2本は黄色と黄緑の太い線。これはフランス車ではアース線なのでこれも除外。
すると残りは4本。この4本の配線番号だけ見ればOK。
ハイ、ありました(^_^)v
う〜〜ん、さすが僕ちゃん!(誰も褒めてくれないので自我自賛)
この水色線の赤印部分に6739って書いてあるんですけど・・・
見えます???
(この写真はクリックすると大きい画像で見れます)

ちなみにこのネタの為?この部分の写真は30枚以上撮って
一番鮮明な写真を載せてますけど・・・・見えないですよね??

実物を見ても”この数字を読め”といわれると難しく
この数字が6739か違うか?という視点での判断に近いです
ちなみに、メールや電話でプジョー・シトロエンの車速取り出し位置の質問があると
「配線番号6739を確認してください」って言うんですけど、
聞いた人はきっと実物見たら
「意地悪された」と思うかも・・・それほど読み難い・・・・
プジョー・シトロエンの場合、配線色は仕様によって異なる場合があるので
実際僕らもこの配線番号で確認してるんですけど、見難いのは事実ですから・・・・

それはとにかく、見つけた6739を念のためテスターで信号を確認しこれで一件落着。
ABSユニットを見つけてから車速信号を確定するまでの時間は15分ほど・・・

結局、
秘密諜報部員を暗躍させたりし、この記事の大半を占め、
実際にも時間をかけて収集・分析した情報は実際には利用せず

実車みたら別のところで15分で確定・・・・・
これぞまさに百聞は一見にしかず・・・・・・・

まぁ・・・こんなもんでしょう・・・(^_^.)
長々書いてますけどこんなオチです・・・・・

後は翌日にサクサクと取り付け。
取付完了画面はすでに取付事例にアップ済ですけどこんな感じ。
以下はオマケと後日談で・・・・今回の取付で無駄になった物が2つ。
一つ目はこれ。
汎用のCAN−BUSアダプター。
念のために用意しておいたのですが
上記の通り使わなかったので在庫に。。。

過去の経験上、汎用のCAN−BUSアダプターは
数ある取付事例の中でも1台しか使ったことが無い
(確かジャガーに使ったことがある)ので
これも不良在庫になる可能性大。

まぁ、でも殆どの車種に使えるから
在庫しといても損の無い物ですけど・・・・・・
2つ目はこれ。
プジョー純正アクセサリーのAUX入力コード。
今回の取付では
ナビで再生する音楽ソースは純正オーディオを介して
車両スピーカーから出す使い方がメインになるので、
是非ともこれで接続したかったので用意しておいた
けど、これ。接続しても
ディーラーの専用テスターで
設定変更しないと使えない

それは知っていたのだが・・・・記載の通り内密な取付なので・・・
設定変更は依頼できず・・・一応試しに接続してみたが
やっぱり設定変更しないと認識しない・・・・
で、見積もり通りにFMモジュレーターで接続しこれは在庫に。。

まぁでもこれは近年の欧州車の汎用コネクターなら
応用できるので、そのうち役にたつでしょう。。。
ちなみに取付から一ヵ月後・・・・S様から連絡があり、結局ディーラーでAUX入力を付けることに・・
内緒で・・・が大前提&縛りの取付でしたが
付けてしまえば既成事実&どうせ次の定期点検ではバレるってことで・・・

う〜〜ん・・・・・ならこのアダプター、付けるだけつけときゃ良かった(>_<)


最新記事 のTOPへ 前月記事